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がんについて 16

前立腺がんと肥大症

がんとよく似た病気は数多く、そのために誤診といった問題が生じる。前立腺がんと肥大症もその一例で、肥大症だと言われつづけたものの結局がんであったなどの話しもよく耳にするところである。それは、判別が難しいことも関係しているが、その道の専門家が少ない点も大きく影響している。前立腺がんが欧米に多く、日本では少ないことは、医師や研究者の中に前立腺の専門家がほとんどいない現実を意味し、それゆえ診断のノウハウが普及していないのだということになる。前立腺の状態を簡単に知るために、「国際前立腺症状スコア」がある(表)。これらの質問を通して、膀胱や尿道の閉塞、肥大による刺激の程度を推測することができる。合計点が7点以下なら軽症、8〜19点では治療が必要、20点を超えると生命が危ぶまれる状態といわれる。概ね10点を超えたら、明かに要注意である。前立腺肥大の治療は、症状によって異なる。薬物療法と手術療法に大別され、軽症のうちには薬物療法が行なわれる。薬物の効果が現れなかったり、前立腺症状スコアが高く、日常生活に支障が出る場合には、手術の適応となる。現在広く行なわれているのがTURF(経道的前立腺切除術)で、尿道の先端から内視鏡を挿入し、先端についている電気カンナで肥大した前立腺組織を切り取る方法である。また、電気カンナのかわりにレーザー光を使って行なう方法もあり、今後はレーザーによるものが普及していくだろうといわれている。前立腺がんの腫瘍マーカーとしては「PSA(前立腺特異マーカー)が注目されている。前立腺上皮から出る微量の蛋白酵素で、2ng/ml前後が正常だが、4ng/ml〜10ng/mlはグレーゾーン、10ng/ml以上だとがんが疑われる。あくまでもこれは統計上の目安なので、あまりに数値に一喜一憂するのも考えものだが、50歳以上で数値が高い人は、一度6点生検法という精密検査を受けた方がいいだろう。がんの場合も基本は手術だが、それも年齢や進行状態をよく見極める必要がある。前立腺がんは高齢者に好発するので、心臓などの血管系に障害があるときにはホルモン療法がよいなどの意見もあるからだ。また、高齢になって偶然発見された微小ながんには放置しておいても進行しない例もある。前立腺をテーマにしたセミナーには、たくさんの中高年の方々が集まってくる。質問の時間になると、我先にといわんばかりに手をあげ、いかに肥大やがんの治療が大変であるか、夜中に何度もトイレに行くことがどれほど苦痛か、いつになったらすっきりとした排尿ができるのか、とうとうと訴える姿を目にする。肥大は老化現象、がんは高齢者の病気と簡単に片付けられない重みを感じた。何でもそうだが、そのつらさは身を持って体験しないと理解は難しいものだ。