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植田 美津恵
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2011/04/11 緊急!放射線と健康Q&A

皆さまからの質問を基に分かりやすく解説

放射線と健康被害

大規模な地震に続く原発事故で、放射線の影響を心配する声をしきりに聞くようになりました。
ここでは、皆さまから寄せられた質問に答える形で、放射線の影響を健康被害に限定してわかりやすくお答えし、一緒に考えてみたいと思います。

Q、そもそも放射線はいいもの?悪いもの?

A.どんなものでも100%身体に良いものはありませんし、100%悪いものもありません。

放射線は自然界に広く存在していることはよく知られています。放射線にさらされる(これをばく露といいます)のを被ばくといいますが、日常の放射線量を超えるような、「非日常の被ばく」や「予定量以上の被ばく」に陥ったとき(まさに、今回のような!)に問題になります。

Q、放射線を日常の予測以上に浴びてしまうとどうなるの?

A.高線量の被ばくを急激に大量に浴びた場合→急性放射線症になります。

血液障害や消化器症状など(めまい、貧血、吐き気、脱力感など)を引き起こします。
低線量の被ばくであっても、それが長期間続いた場合は、がんを発症させたり白内障になったりすることもあります。
がんになる確率が明らかに大きくなるのは1年に100ミリシーベルトの放射線を浴びた場合、がんの危険性は0.5%高くなるといわれています。ちなみに胸のレントゲン一回分は0.05ミリシーベルトです。

Q、放射線を浴びると必ずがんになりますか?

A.そうとは限りません。放射線とがんは特異的な関係ではありません。

つまり、大量の放射線イコールがんではないということです。
たばこについて考えてみましょう。たばこはたくさんの量を長年吸っていればがんになる確率は確かに増大します。
でも、同じ条件でもがんにならない人も存在します。たばこを吸えば必ずがんになるとは言い切れないのです。放射線も同じことです。それはがんの発症というのはひとつの原因だけでなるものではなく、食べものやストレスや個人の遺伝子など他の要因も絡んでくるためで、がんの原因を特定するのはとても難しいのです。

Q、原発周辺の野菜などが出荷制限されているけど、食べても大丈夫?

A.国は、放射性物質が多量に検出されたものを「念のために」出荷制限をしましたが、検出された放射性物質は徐々に減っていきます。

心配なら制限が解除されるまで待ってください。すでに一度出荷が規制され、その後解除になったものもありますから、むやみに怖がる必要はありません。

Q、放射線は発がん性がある一方で、がんの治療にも使われるのはなぜ?

A.WHOは発がん性物質をいくつか定めています。

それをみると、「女性ホルモン」も発がん物質に指定されています。女性ホルモンは女性にとってはなくてはならないものですが、若いころはともかく、更年期の年代に入っても尚、女性ホルモンにさらされすぎると乳がんや卵巣がんのリスクが高くなります。放射線も同じように、多量の放射線は発がん性がありますが、線量と照射時間を適切に規定したうえでなら、がん細胞を殺す可能性があり、治療として活用されているのです。

Q、放射線ががん細胞を殺すのはなぜ?

A.放射線は体内の活性酸素を増大させます。

活性酸素はDNAに傷をつけ、最終的には細胞の死を招きますので、がん細胞に対し照射をします。ただし、放射線の種類によっては正常な細胞にもダメージを与え、吐き気や脱力感、脱毛や皮膚の変色などの副作用をもたらしますから、放射する線量と時間については高度な専門の知識が求められます。

Q、放射線は痛みの緩和にも効果があるの? その場合副作用はないの?

A.緩和ケアといって、がんによる痛みを少しでも楽にするために放射線を使うことがばしばあります。

放射線による効果は、
(1)神経を圧迫したり周囲組織を壊して痛みを増強させていたがんを小さくする。
(2)痛みを起こす物質(破骨細胞)の分泌を抑える。
などがあります。
副作用を最小限に抑えられるよう、放射時間と量を守る必要があります。皮膚の変色や白血球の減少などの副作用が一時的にはありますが、この場合は「痛みの緩和」を最大目標にして放射線を使います。

Q、放射線にさらされたら、ヨウ素性物質を飲むといいというのは本当?

A.放射性物質には、ヨウ素やラジウムなど様々ありますが、ヨウ素性の放射性物質は甲状腺に集まり、甲状腺がんやその他の甲状腺機能障害を引き起こすことが知られています。

それを防ぐために、放射性ではない安定性ヨウ素剤を飲用することで放射性ヨウ素物質の甲状腺への集中を防ぐことができます。ただし、40歳以上の人では効果がないことや対象となるのは甲状腺だけで他の臓器の発がんは期待できないことから、ただやみくもに飲めばいいものではありません。日本ではある一定の量の放射線が認められた場合は、安定ヨウ素剤を40歳未満の若年者に配布することが法律で決まっています。

Q、放射線と放射能は何が違うの?

A. 「放射線」は、放射線を出すもとの物質があって初めて出るもの。

「放射能」は、放射線を出す能力のある放射性物質のこと。宇宙から地球には様々な放射線が降り注いでいますが、これらは太陽や他の星から出ていることから、太陽なども放射性物質ということになります。

Q、放射線の種類にはどんなものがあるの?

A.私達に馴染み深い「エックス線」、「ガンマ線」、先進医療として知られる「重粒子線」や「陽子線」、美肌に大敵な「紫外線」、「赤外線」「マイクロ波」「短波」「長波」と呼ばれているもの、これらは皆、放射線の仲間です。

Q、放射性物質にはどんなものがあるの?

A.「ヨウ素」「セシウム」「コバルト」「ラジウム」「プルトニウム」「ラドン」などがあります。

がんが治るという触れ込みでがん患者の聖地のようになっている秋田県の玉川温泉からはラジウムが出ています。また、ラドン温泉も人気があります。放射性物質でも少量なら、かえって健康に良いということがわかっています。

Q、これからいったいどうしたらいいの?

A.発信されている情報の信ぴょう性は、疑い出したらきりがありません。

あれこれと振り回されていては外出もできず、何も口にすることはできません。
随時、厚生労働省から発表される内容を自分なりに吟味し、(わからないことがあればメールをください)それに従った行動をとることが今は一番です。その前の基本的な知識として、この「Q&A」を作成しましたので、どうぞご活用ください。

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